政府はサイバーテロ対策を本格化させる

(時事通信) 15:05

開催まで5年を切った2020年東京五輪・パラリンピックに向け、政府はサイバーテロ対策を本格化させる。12年のロンドン五輪でもサイバー攻撃が相次ぐなど、世界から注目を浴びる五輪は格好の標的。競技の中止や電気、交通インフラの混乱を防ぐ体制強化に加え、高度なIT技術を持ち攻撃に対処する「ホワイトハッカー」などの人材育成も急ぐ方針だ。

ロンドン五輪では開会式の照明システムの稼働停止を狙った攻撃があり、大会公式サイトは2週間の開催期間中に2億2100万回ものサイバー攻撃を受けた。三菱総合研究所の村野正泰主席研究員は東京五輪について「警備システムをサイバー攻撃し、実際の警備をかく乱させた上で、武器などによる物理攻撃に移る複合パターンもありうる」と指摘する。

政府は今春にも電力、交通インフラ、宿泊など東京五輪に関係する重要業種を指定。16年度以降、サイバー攻撃で起こる事態の想定や、対策の構築を始めてもらう計画だ。ただ攻撃は日々進化するため「4年半後にどのような攻撃があるかを予測することは困難」(内閣府)。このため、今年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や、19年のラグビー・ワールドカップを実地訓練の場とし、最新の攻撃を分析した防御体制に更新していく。

人材育成も急務だ。政府は17年4月にも新たな国家資格「情報処理安全確保支援士(仮称)」を創設し、試験制度を導入する。20年までに3万人の資格取得を目指し、政府関係機関や重要インフラ機関に配置していく。さらに攻撃者と同等の高度な知識や技術を持つホワイトハッカーも一定数確保する。

しかし、ホワイトハッカーに関しては「試験や学校で育てることができない」(経済産業省)のも事実。同省は、IT技術を競う大会の開催やセキュリティーに興味を持つ若者向けの育成キャンプを通じて人材発掘を進めていく。

サイバー攻撃は20年までに一段と高度化することが確実視されている。東京五輪の成否は、日本のサイバーセキュリティー向上が大きなカギを握っている。